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心に刺さる“神回” 誰しも関係のある豊富な文脈

 その文脈は、エイミーという登場人物に関係しています。シーズン2で彼女は、通学中のバスで痴漢被害に遭います。PTSD(心的外傷後ストレス障害)に襲われ、トラウマからバスに乗れなくなってしまうのです。

 痴漢被害を「大したことではない」と思っていたエイミーですが、PTSDは次第に彼女のメンタルや日常を脅かし始めました。親にも相談できず、一人で苦しみを抱えていたエイミーは、ひょんなことから居残りさせられたクラスメイトの女子たちに、被害を打ち明けます。互いに共通点がなく、普段は仲が悪い者同士でしたが、抑えていたものが爆発したように泣くエイミーを見て彼女たちは団結します。バスに乗れなくなってしまったエイミーのために、全員で一緒にバスに乗って通学したのです。「シスターフッド(女性同士の連帯)」を見事に表したシーンでした。

シーズン2 エピソード7(セックス・エデュケーション -Netflix

 リツイートランキングを見ても、この文脈からはかなり多くのクチコミが出ており、視聴者に大きな共感と感動を呼んだことがわかります。私も泣いてしまったエピソードです。

 リツイートランキングからは、上記以外の文脈も探れます。そこで300件ほど目視でツイートを見ていて気づいたのは、この作品には「語りたくなる文脈」が多様かつ豊富に用意されているということでした。

 『セックス・エデュケーション』は、トピックが非常に多い作品です。フェミニズム・LGBTQ・人種・障害・家族関係・夫婦関係・いじめ・性の悩み・恋愛・友情など、生きている以上は誰もが無関係ではないトピックがそろっています。

 思春期にありがちな悩みから社会問題まで幅広く扱っているため、誰もがひとつは心に刺さる文脈があるのです。例として、以下の文脈を4つ挙げます。

※「セックスエデュケーション」に「単語」を組み合わせてクチコミ検索(AND検索機能)した結果、このような検索数が明らかになりました。2019年1月~2020年1月までの期間と、クチコミ数が増えたS2解禁後の2020年1月~4月16日(執筆時点)までの期間の合計を書いています。件数は、日本国内のツイート数の10分の1をサンプリング抽出し、その値を実数(10倍)に計算し直した数値を記載しています。

1. 登場人物たちの恋愛や友情への共感

  • 友情:250件
  • 友達:320件
  • 恋愛:510件
  • 愛:220件

2. 家族関係や家庭の問題への言及

  • 家族:160件
  • 親子:200件
  • 家庭:130件

3. LGBTQの描写に対する称賛や応援

  • LGBT:450件
  • 同性愛:150件
  • ゲイ:320件(「レズビアン」や「バイセクシャル」など、ほかのセクシャリティよりもずば抜けて件数が多かったのは主要登場人物のひとりがゲイだからと予想)
  • エリック+アダム:250件(上記の人物の恋愛と絡む単語の組み合わせ)

4. 日本の性教育と照らし合わせて感じた疑問

  • 性教育:160件
  • 日本+性教育:100件
  • アフターピル:220件(登場人物が緊急避妊薬を意味するアフターピルを薬局で購入する回がある)
  • 中絶:200件(中絶問題にフォーカスした回がある)

 以上は一例ですが、このようなクチコミが出ています。センシティブな題材にもかかわらずクチコミが多い理由は、トピックの多様さや豊富さゆえに、視聴者が現実で経験したことや社会問題とドラマがリンクしやすい/自分事化されやすいため、思わず一言いいたくなる気持ちが芽生えるからではないでしょうか。共感を生む文脈が豊富であることは間違いないと、私は考えています。

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性を通じて「生」を伝えている点が共感を呼んでいる

 記事中で本作を「センシティブな題材」と形容しましたが、実際のクチコミではセンシティブさを感じている声は非常に少ないです。

 「教材にして」「笑えるし優しい」「若い人も上の世代も見るべき」「大事な話が描かれてる」といった声が圧倒的。性教育=性を通じて「生」を伝えている点が、こうした声が出ている理由だと思います。

 そもそも、性に関する話(下ネタではなく)をセンシティブとしてオープンに話せない風潮そのものに、この作品は切り込んでいます。話せないのではなく、話したくなる。そういう内容に仕上げているからこそ多くのクチコミが生まれ、ファンも世界中にいるのでしょう。シーズン3が待ち遠しいです。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

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