アニメ「ちびまる子ちゃん」は30年間でどう変わったか? キャラとストーリーの変化に見る“ご長寿アニメ”の現在

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 「ドラえもん」や「サザエさん」と並んで、今や国民的アニメのように語られることもある「ちびまる子ちゃん」。「心温まるほのぼの日常マンガ」「個性的なキャラクターがたくさん出てきて面白い」みたいな感想もよく聞くが、果たして最初からそうだっただろうか。

 「りぼん」で原作の連載が始まったのは1986年。その後90年にアニメが開始され、当初は原作そのまんまをアニメ化したような内容だったが、徐々にオリジナルストーリーも増えて作風も変わってきた。

 その変化についてあらためて気づかされるタイミングがある。何年かに一度、「○○周年企画」などで原作をリメイクしたアニメが放送されるときだ。年が経つにつれ作風が変わった「現在のちびまる子ちゃん」の土壌で、原作の「昔のちびまる子ちゃん」をしようとすると、「いつもと違うちびまる子ちゃん」になってしまうのだ。

「原作まつり」を現在放送中のアニメ「ちびまる子ちゃん」(画像は「ちびまる子ちゃん オフィシャルサイト」より引用

 初期のころと現在のアニメ「ちびまる子ちゃん」とを比較して、大きく変わったと思われる点を見てみよう。

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優しかった永沢君、一人称が「オイラ」だった花輪君

 まずは主要キャラクターの性格変化について。30年以上経つとどのキャラクターにも多少の変化はあるが、その中でも気になった3人をピックアップしてみた。

お姉ちゃん

アニメ第1期での「お姉ちゃん」

 2021年に公式で「好きな原作のお話」の人気投票がおこなわれ、上位作品のリメイク版アニメが現在放送されているのだが、どの話も原作に沿った作りになっているなか、お姉ちゃんの描かれ方はかなり改変されていた。

 原作だと「夏休みが始まる前の終業式の日に、1学期の荷物を引きずりながら下校する計画性のないお姉ちゃんとまる子。血は争えない」というシーン(連載第1話「おっちゃんのまほうカード」の巻)があり、90年にアニメ化されたときにはそのままだった。だが今回のリメイク版では「計画性があり、身軽に下校するお姉ちゃん」に変わった。おそらく原作に沿うと、現在のお姉ちゃんのキャラとあまりに違いすぎるからだろう。

 しかし、お姉ちゃんが今のキャラと違うまま放送されたシーンもある。「いつもはクールなのに、遠足の準備で浮かれて歌って踊り、おどけるお姉ちゃん」(連載第3話「まるちゃんは遠足の準備が好き」の巻)のシーンだ。これはこれで今の視聴者から見ると「キャラ崩壊」ぐらいの印象になるんじゃないか。

永沢君

優しさを持ち合わせていた初期・永沢君

 元々は参観日に誰も来てくれないことを悲しむ地味めな男子として登場。大人しくて弱気な癖に、誰も言えないことをサラッと言ってしまう無神経さは持ち合わせていて、場の空気を凍らせることも多々あったが、親友の藤木や弟に対しては優しかった。

 そんな永沢の登場回数が徐々に増えてきたころ、卑屈なこじらせ思春期の中学男・永沢が描かれたスピンオフマンガ「永沢君」の連載が「ビッグコミックスピリッツ」で始まり、それとほぼ同時期に本編「ちびまる子ちゃん」の永沢のほうにも変化が見られた(コミックだと11巻)。性格が悪くなり、遠慮なくズバズバと感じの悪い発言をするようになってきたのだ。「永沢君」で登場した野口さん、小杉、城ヶ崎さんが本編に登場するようになったり、「永沢君」の作風が本編に流れ込んできた感がある。

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 その後、アニメのほうでも永沢の口の悪さはどんどん容赦なくなり優しさの欠片もなくなっていたが、近年また弱気さや優しさを取り戻しつつあるのだ。声色も以前と比べてマイルドになったと感じることがある。もしかしたら初期の設定に寄せようという軌道修正がおこなわれてるんだろうか。

花輪君

公式で「キザ野郎」呼ばわりされていた花輪君

 花輪君は当初一回きりの予定だったキャラだ(コミック2巻に「意外な人気でレギュラーの座を獲得」とある)。生き物係に立候補して、張り切ってカエルの卵やザリガニを捕まえに行く男子として登場した。

 キザなだけでなく、でしゃばり・小心者・マヌケ・わからずやでどうしようもない性格(と作中にも書いてある)で、まる子に対して心の中で(このバカ女)とか言ってるので、現在の優しく余裕があるジェントルマン設定とまるで違う。ちなみにこの頃の一人称は「オイラ」だ。

 その後、でしゃばり・わからずやといった要素は消え、分かりやすい金持ち自慢をしまくるように。例えば「キミたちは本物のダイヤモンドなんて見たことないだろうな。ボクはいつも見てるけどね」などである。さらにインド哲学に凝ったりヒッピーに凝ったり、ざっくり言うと変な金持ちだ。この頃、花輪君+丸尾君というめんどくさい男子をひとまとめにして「花丸コンビ」と呼ばれていた。

 だが原作中盤あたりから、「母親はニューヨークに住んでて、普段は寂しい思いをしている」「実は英語がペラペラ」などの設定が加わり、困ってる外国人を助けたりみんなに英語を教えたりしているうちに、だんだん羨望のまなざしで見られるように。そしてめんどくささがまるで消えて非の打ち所がなくなった

 先日アニメ放送されたリメイク版で「書き初めの宿題を使用人に書かせて賞を取った」シーンがあったのだが、それに対して「花輪君がそんなことするなんてガッカリ!」「そんな子だったっけ!?」というようなツイートが多く見られ、そんなに真面目で紳士みたいな印象が根付いてるのかよと変化を再認識させられた。

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