【特別インタビュー】リクルート進学総研・小林所長に聞く「これからの大学に必要な4つの要素」とは?

ツイートする Tweet ツイートを見る
Share
LINE
hatena
Home

 リクルート進学総研では、高校生や高校生の保護者、高校の教員、高等教育機関など、進路選択に関する調査を実施し情報発信しています。また、学校基本調査などのデータを分析し、今後のマーケット予測を行っています。

画像はイメージです(画像:PIXTA)

 ねとらぼ調査隊では、そんな「リクルート進学総研」の協力のもと、志願度、知名度など各項目の大学ランキングを紹介しています。今回は特別企画として、リクルート進学総研所長の小林浩さんに調査の経緯から今後発展する大学の特徴などについて、お話をうかがってみました。

※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

リクルート進学総研所長・小林浩さんプロフィール

1964年生まれ。株式会社リクルート入社後、グループ統括業務を担当、「ケイコとマナブ」企画業務を経て、大学・専門学校の学生募集広報などを担当。経済同友会に出向し、教育政策提言の策定にかかわる。その後、経営企画室、会長秘書、特別顧問政策秘書などを経て2007年より現職。趣味はサッカー観戦、ダイビング、デジタル家電。

高校生と大学のミスマッチを解消したい

 大学に関するランキングを始めようと思ったきっかけはなんですか?

――進学ブランド力調査は、2008年からプレスリリースを開始し、2023年で15回目の調査となりました。調査を開始した背景は、ランキング結果をきっかけに、高校生と大学自身がより大学のことを知り、また高校生が志望先を選択するための参考になればと思い始めました。

 調査開始から現在の間で、大学入試のトレンドはどのように変わっていったのでしょうか

――大学全入時代を迎える中で、大学はこれまでの「選ぶ側から選ばれる側」に変化していきます。また、入試が多様化し、高校生にとっても偏差値という大学選びのモノサシが絶対的なものではなくなっていく状況にあります。文部科学省も「選抜から相互選択へ」という言葉を使っています。このように時代が変化するなかで、大学と高校生とのコミュニケーションギャップは依然として存在しています。大学には高校生がどうとらえているかの実態を伝え、できるだけ高校生と大学のミスマッチを解消したいと調査を開始しました。

 確かに「入ったのにイメージとちがった」というのはお互いに悲しいことですよね……。ランキング結果について、学生などからの反響はどうですか?

――有名大学だけではなく、分野別ランキングなどで、なぜその大学が上位に位置しているのか、その分野に強い要因は何かというように、これまで知らなかった大学にも興味関心がでてきたという声がありました。また、大学のイメージランキングなどでは、親と一緒にランキングを見たときに、親の時代とはイメージが随分変わったと話題になる大学があるなど、親との会話が弾んだといった反響もありました。

 時代の変化といえば、コロナ禍が学生や大学に与えた影響も大きかったのではないかと思いますが、そのあたりはいかがですか?

――コロナ禍の影響もランキングには反映されております。高校生の進学希望分野では、「外国語」「観光・コミュニケーション・メディア」「国際」などは2021年より減少が続き、コロナ禍が落ち着き始めた今年は回復が期待されましたが、減少となりました。一方、コロナ禍が落ちつき実技を重視する「体育・スポーツ」「美術・デザイン」などは回復傾向にあります。

知名度=志願度ではない? 志願の決め手になるのは

 今回のランキングを拝見していて、知名度が必ずしも志望度に直結しているわけではないように思いました。この点について何かお考えはありますか?

――概ね知名度ランキング上位の大学が志願度ランキングも高い傾向にあります。まずは大学名を知って、それから詳細を知って志願度が高まる傾向にあると思われます。そして、志願度ランキングは知名度ランキングと比較して、自宅などから通いやすい地元の大学が多くなる傾向があります。

 なるほど。オンライン授業もあるとはいえ、やっぱり通いやすさは重視しますよね。

これからの大学に求められる4つの要素

 最後の質問になりますが、これから発展していくのはどのような大学だと思いますか?

――そうですね。いろいろな観点があるかと思いますが、私は大きく4つの要素が大学ランキングを高めるための重要なポイントだと考えております。まずひとつ目は「時代に合致した学部・学科の充実」です。学びたい学部・学科があることは、別調査でも学校選択の重視項目として最も割合が高いため、時代の変化や高校生のキャリア志向の変化を把握し、これからの時代にあった学部学科があることが重要だと考えています。たとえばAIやグローバル化に関する学部・学科ですね。

 時代の流れを常に読み、柔軟に変化できる大学は確かに魅力的ですね。

――2つ目は「将来のキャリアを見据えた学びのサポート」です。入学がゴールではなくなっていることから、卒業時にどのような能力がつくのか・キャリアサポートではどのようなことが行われるのか可視化することや、資格取得に向けたサポートが重視されています。また、将来社会に出た際に活躍できる力を身につけるために、地元企業との連携や産業界の連携など、さまざまな学びの場を設けることも重要です。

 学生は「大学でできること」や「したいこと」ばかりに注目しがちですが、キャンパスや大学の設備だけでなく、連携先にも注目してみることが大事ですね。

――そうですね、もちろん「学ぶ場の価値創造」も大切な要素です。近年は、主体的に学ぶアクティブラーニングが推進されていて、教室や図書館等の学ぶ場が大きく変化しています。キャンパスの移転なども含めて、コロナ禍でオンラインの導入が進んだ今だからこそ、改めて集まる場所として、キャンパスの価値を伝えていくことが重要だと考えています。

 なるほど。今後問われていくテーマですね。

――そして4つ目が「強みの創造と差別化戦略」です。大学は、入口偏差値で序列化され、MARCHや関関同立といったグルーピングでくくられる時代が長く続きました。しかし、そのそれぞれの大学の個性は全く異なります。入学時の偏差値による序列化ではなく、卒業時に何が身に付いたのかといった社会に出てからの視点が強くなったことから、各大学の個性や強み、価値をしっかりと見て、自分に合った大学を選ぼうという機運が高まっています。だからこそ、各大学で何が学べるのか、どのように学ぶのか、何が身に付けられるのかをしっかりと伝えていくことが重要です。

――高校生のみなさんは「進学して何を学びたいのか、また、学びを通じて将来どのような仕事をしたいのか?」をぜひ一度考えてみていただけたらと思います。

 小林さん、貴重なお話をありがとうございました。大学選びのしかたも時代に合わせて変わっていくことがわかりました。社会の変化や受験生の観点の変化に伴って、大学側のアピールポイントもこれから更に変化するかもしれませんね。

 次のページでは、「リクルート進学総研」調べによる「関東・関西・東海の学生が選んだ志願度ランキング」をご紹介します!

関連タグ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

「大学」のアクセスランキング